番組内容
ポーランド  ワルシャワ「ミロフスカ市場」
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■首都ワルシャワ。左奥の建物が文化科学宮殿

ヨーロッパ大陸のほぼ真ん中に位置し、美しい森と平原が広がるポーランド共和国。国土は緑あふれる大平原に無数の川や湖沼が点在し、農業が盛んです。国内には、世界遺産リストに登録された文化遺産が10件。さらに隣国ドイツとにまたがって1件の文化遺産が、さらにベラルーシとにまたがって1件の自然遺産が登録されています。2004年5月1日には欧州連合(EU)に加盟しました。日本からの直行便はなく、フランクフルト、パリ、ロンドン、コペンハーゲンなどの都市経由となります(乗り継ぎ時間を含め15時間半から18時間半)。通貨はズウォティで、1ズウォティは約39円です(2006.8現在)。
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■人魚の像(ワルシャワ旧市街広場)

首都はワルシャワ。1596年にクラクフから遷都され、1611年に首都となりました。人口は約165万人。かつて戦火の舞台となったにも関わらず、その街並みは「北のパリ」と称されるほど美しく、まるで時が止まったかのような穏やかな雰囲気が漂います。第二次世界大戦でこの街はナチス・ドイツに占領され、徹底的に破壊されました。しかし、市民は当時の姿のまま、街を復元することを決意。記憶や資料などをもとに、壁のひびや、レンガのゆがみまで忠実に蘇らせたのです。驚異的な復活を遂げたこの旧市街は、1980年、世界遺産に登録されています。

そんな過去の街並みを見下ろすように建っているのが、街を一望できる文化科学宮殿。これはソ連のスターリンからの贈り物として建てられたもので、高さは234mで街のランドマークとなっています。この街のメインストリートの新世界通りには、ブランドショップやカフェがずらっりと並んでいます。自由経済後、急速に発展を遂げたポーランド一の、流行や情報の発信地です。ワルシャワは、伝統と近代性が共存し、さまざまな表情を見せてくれます
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■庶民の台所「ミロフスカ市場」

目指す市場は、ワルシャワの中心地にありました。ビルの谷間の緑に囲まれた、庶民の台所「ミロフスカ市場」。1899年に設立、市内最大の市場としてだけでなく、憩いの場所としても市民から愛されていました。しかし1944年、戦争で破壊され、1962年に修復。現在、建物内はスーパーマーケットとして利用されています。いったい市場はどこにあるのか?と思ったら…、建物の中じゃなくて、外! 周囲を取り囲むように、およそ300のお店が並んでいます。

生産農家の直売はスーパーよりも安く、新鮮な生鮮食品が手に入るとあって、地元の奥様方には大人気です。美味しい野菜には理由があります。土地はよいし、肥料も自然のものだし、何よりもちゃんと世話をして育てているのです。軒先に積まれた野菜はどれもプリップリで、そのままかぶりつきたいくらい美味しそうです。今が旬のトマトは1s5.5ズウォティ(約218円)から。

そんなトマトに並んで変なものがありました。トマトのような?…でもカタチがちょっと違うし。ツォ・ト・イェスト(これはなんですか?)という問いに、「バイソンの心臓」というトマトだよ!という答え。すごいネーミングのトマトです。初めて聞いたし、初めて見ました。中には種がなく、フルーティーな香りがします。ラズベリーのように甘くて瑞々しいトマトだそうで、1s6ズウォティ(約238円)。「たとえばほかの国が10回農薬を使っても、ポーランドは2回しか使わないよ。だから体にも優しいものなんだ」と言ってオジサンが胸を張るのも当然。だって、まだ午前中だというのに、市場の中は大盛況。買い物客で溢れています。
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■たっぷりのフルーツが並ぶ

ウィンドウの中に、白いものが並んでいます。よく見ると、餃子のような、ラビオリのような…。このピエロギ、その昔、中国の餃子がロシアを経て伝わり、アレンジされたものらしく、今やポーランドの定番庶民料理のひとつになっています。具は、シーズンの果物が入ったものなどいろいろありますが、オーソドックスなのはチーズと挽肉。12ズウォティ(約477円)。他にも、ポーランドらしい食品を見つけました。さきほどのピエロギや、その他スープ料理、煮込み料理、何にでもあう、ライ麦の黒パンです。日本で見かける黒パンより、もっと独特の酸味が強くてフワフワです。黒パンは体によい成分が多いから健康的なパンなので、皆大好きだそうです。ライ麦の黒パンは1.5ズウォティ(約59円)から。

そのお隣はケーキ売り場。おいしそうなチョコレートケーキ…と思ったら、ケシの実のケーキ。ケシの実!!? 確かに、よく見ると粒々があります。チョコレートだと思っていた物はケシの実なんですって。甘過ぎず、ちょっとホロ苦さもある伝統的なケーキで、クリスマスやイースターには欠かせないのだそうです。14ズウォティ(約577円)。このケーキの作り方をみたいのなら、グラカリバリアのヤニナマリア・クビッチさんのところへ行くといいわ…ということで、明日、このケーキの職人さんを訪ねてみることにしました。楽しみです。

甘い香りを放つ売り場を見てみると、そこにはたっぷりのフルーツがありました。ポーランドは自然が多く果物が豊富、イチゴやラズベリーなどいっぱいあるわよ…お母さんのいう通り、夏の時期はベリー系など、森の恵みが豊富です。ラズベリーは1パック5ズウォティ(約199円)。「皆、果物が大好きよ。多少値が高くても買っていくわ。ラズベリーは出始めの頃は20ズウォティ(約796円)もしたわ。それでも買うのよ。それくらい果物が好きよ」とお客さん。日本では、比較的高価なサクランボも、1sで5ズウォティ(約199円)から。
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■ワルシャワで味わう、牛肉を使ったフォー

市場内の散策を終えると、ちょうどお昼の時間。この建物の脇に、今、大人気のレストランがあるというので向かいました。看板には「ASIAN TASTY」とあります。どことなくオリエンタルな雰囲気の店内は、もうすでに満席。お客さんは、お箸を使っていたり、レンゲでヌードルを食べていたり。まちがいなく、アジア料理のようです。

実はこちら,ベトナム出身のご主人が経営するベトナム料理店だったんです。レストラン「ASIAN TASTY」。ワルシャワでは、このおコメで作られたフォーが、”ヘルシー”フードだと、注目を集めているとか。注文したのは、牛肉を使ったフォー。ほんの数分で完成。とてもいい匂いで、食がそそられます。ポーランドで食べるフォーのお味はどんなだろう?と気になっていましたが、食べてみてビックリ。本場ベトナムのフォーそのものです。このツルツルの麺の食感が、ポーランドの人々には意外な発見だったのかもしれませんね。12ズウォティ(約477円)。
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■西水佳代さんと、マグダ・チャイコフスカさん

ランチの後、ポーランドが生んだ天才作曲家・ショパンに魅せられ、このワルシャワに暮らす日本人がいると聞き、訪ねてみることにしました。「ショパンの曲には人生、哲学が含まれている。神様が創った作曲家。魂が吸い込まれる」という西水佳代さん(44歳)は、ワルシャワ在住19年。兵庫県出身で、ピアノの勉強をするためにポーランドへ。1991年にトロンボーン奏者の夫と結婚。子供は4人。2004年から8年間掛けて全曲(230曲)コンサートに挑戦中です。公演はショパンの誕生日と命日の年2回、華やかなホールより小さなホールの方が好きなのだそうです。

公演の一方、ワルシャワ郊外ミハウォビーツェ村の自宅で、近所の子供たちにピアノを教えています。生徒は10人。「子供たちには、表現力、集中力、喜びを知ってもらいたい」といいます。「佳代先生はとっても優しい先生です。教え方も分かりやすく、とっても嬉しいです」とマグダ・チャイコフスカさん(9歳)。「子育てが終わってからでもピアノはできる。家族がいるからこそピアノが弾けるのです。家族がいない生活なんて考えられません」という西水さんでした。
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■クリスマスやイースターには欠かせない、ケシの実のケーキ

翌朝9時、「ケシの実ケーキ」がどのように作られるのかを見学しに出発。都心から車で30分ほどでワルシャワ郊外のベッドタウン、グラカリバリア市に到着しました。ヂェン・ドブルィ(おはようございます)!と出迎えてくれたのは、自宅兼工房でケーキを作っているヤニナマリア・クビッチさん(55歳)とご主人のクシストフさん(53歳)。ヤニナマリアさんは独学でケーキ作りを勉強したんだとか。その時にケーキ職人だったご主人と出会い、1973年に結婚。以来33年、夫婦ふたりで頑張っているそうです。お子さん二人は独立し、現在、お母さんとご夫婦の3人で暮らしです。
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■ケーキに使う材料

母屋を抜け、案内されたのは奥に併設された工房。さすが、食品を扱うだけあって、とってもクリーン。気持ちがいいほどピカピカです。さっそく作業に取り掛かります。ケーキに使う材料は、ケシの実、イースト菌、小麦粉、アーモンドエキス、胡桃、レーズン、ミルク、バター、卵、砂糖、塩。パン作りの材料と似ている気がします。まずとりかかったのは、生地作りです。ミルク、イースト菌、小麦粉を、丁寧に混ぜ合わせます。生地がよく合わさり、耳たぶくらいの硬さになったら、卵、バター、そしてまた小麦粉を入れ、再び混ぜます。一度に全部の材料を合わせるのではなく、様子を見ながら、数回に分けて、さっくりと混ぜ合わせるのがコツ。材料にもこだわりがあります。他のケーキ屋とは違い、日持ちさせるための成分は入れないのだそうです。「自然なものだけで作っているわ。そういったものが伝統的な家族のケーキなのよ」とヤニナマリアさん。

30分ほど混ぜ続け、ようやく生地が完成。イーストが程よく発酵し、すごい弾力。さぁ、続いては、ケーキに包む主役のケシの実です。最初に30分ほど煮込みます。それをプロセッサーにかけ、細かく砕いていきます。この「砕く」作業、一度ではなく、何度も繰り返します。ケシの実を細かくしないと、生地に包んだ時にこぼれてしまうのです。ケシの実がペースト状態に近いくらい細かくなったところで、クルミ、レーズン、アーモンドエキス、そして砂糖、バターなどを加えて混ぜ合わせます。
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■作業をするヤニナマリア・クビッチさん

ヤニナマリアさんが具材を丁寧に混ぜ合わせている間、ご主人が生地を担当。どうやら、分量を量っているようです。切り分けた生地を、今度はひとつひとつ伸ばしていきます。その上に、ケシの実と練り合わせた具材を、たっぷりと乗せていきます。ひとつひとつに、お母さんのような愛情と優しさがたっぷり篭もっている、伝統のケシの実ケーキ。その重さは500gから550g。生地が250gで、ケシの実などの具材が250gなんだそうです。「多くの子供たちがこのケーキを食べているわ。その子供たちのためにもよいものを作っているわ」とヤニナマリアさんは言います。

生地をふんわりと丸め、いよいよオーブンへ…と、思ったら、あれれ、そのまま15分待ちます。紙の中が生地でいっぱいになるくらいに膨らますために置くのです。しっかりと生地が膨らみました。今度こそ、オーブンで焼きはじめます。170℃で30分。焼きたての香ばしさと、独特の甘い香りが漂います。仕上げに、砂糖でコーティングし、ケシの実の粒をふりかけて完成。ポーランドの伝統菓子です。ずっしりと重いのは、愛情がたっぷり詰まっている証拠。

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■家族揃ってテーブルを囲む

午前中の作業が終わり、ランチタイムです。この日は、ハムやサラダと、もちろん作りたてのケシの実ケーキもいただきます。できるだけ家族揃ってテーブルを囲みます。ヤニナマリアさんのお母さんマリアンナさん(84歳)も、ケシの実のケーキは好きなようです。近くで暮らす子供さんたちも遊びに来て、賑やかな食卓になりました。心安らぐ団欒のひと時です。「できれば日本のひとも協力して、日本人にも私が作るケーキを食べてもらいたいわ」とヤニナマリアさん。

敬虔なカトリックの国、そして破壊と分裂を繰り返してきた国、ポーランド。クリスマスやイースターは、離れて暮らす家族がひとつになり、愛と平和を祈るといいます。そんな日に、欠かすことができない特別のケーキを、愛情たっぷりに作り続けている夫婦が居ました。ワルシャワ「ミロフスカ市場」には、子供の幸せ、家族の幸せを願う、甘いケーキが、今日も並んでいます。
余白用

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