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ポーランド ワルシャワ「ワルシャワ花市場」
![]() ■首都ワルシャワはヴィスワ川の中流域に位置する 7つの国に隣接し、東ヨーロッパと西ヨーロッパを結ぶ、陸の架け橋となっている国、ポーランド共和国。緑溢れる大平原広がる国ですが、多くの国と陸続きであり、平地が多く、他国の勢力の侵入が容易な地形であるため、幾度となく戦争に巻き込まれ、国境線が絶えず変化しました。人口の97%がポーランド人。かつては多民族国家でしたが、第二次世界大戦後、ヤルタ会談密約に基づいて国土は地理的に大きく西に移動、現在のような単一民族国家となりました。2004年5月には欧州連合(EU)に加盟しました。ポーランド最長の川はヴィスワ川。流域面積はポーランド国土の60%以上に及びます。 ポーランド南部のベスキト山脈に源流を発し、ポーランド国内を大きく蛇行しながら北へ流れ、バルト海へと注ぎます。通貨はズウォティで、1ズウォティは約39円です(2006.8現在) ![]() ■ワルシャワのランドマーク、文化科学宮殿 首都はワルシャワ。1596年にクラクフから遷都され、1611年に首都となりました。人口は約165万人で、ヴィスワ川の中流に位置し、市域はその両岸に広がっています。製造業、鉄鋼業、電機産業、自動車産業などの工業都市であり、ワルシャワ大学を初めとするポーランド有数の高等教育機関が集中し、オペラ座やワルシャワ交響楽団を有する文化都市でもあります。1989年の民主化以降、急速に発展を続けており、街中に立ち並ぶ大きな高層ビルはその証です。 一方、この街には忘れてはならない姿もしっかりと残されています。ここワルシャワは第二次世界大戦でナチス・ドイツに占領され、徹底的に破壊されました。しかし市民は、当時の姿のまま街を復元することを決断。記憶や資料、絵画や写真などを元に、壁のひびや落書き、レンガのゆがみまで忠実に蘇らせたのです。また、1944年にドイツ軍に対して市民が蜂起、20万人もの人々が犠牲になったことを忘れないようにと、ワルシャワ蜂起記念碑も建てられました(1988年)。どの像の表情も苦しげで、当時の無念さを感じずにはいられません。 そんな、過去と現在が交差する街並みを一望できるのが、文化科学宮殿。234mの高さがあり、街のランドマークとなっています。これは、ソ連のスターリンからの贈り物として建てられたものです。街を散策するといたるところで、天球儀を持つコペルニクスなど、天才たちの銅像を見かけます。不屈の精神を持つポーランド人の気質が、天才を生むのかも知れません。 ![]() ■ワルシャワ花市場 目指す市場は、ワルシャワの郊外にありました。早朝から開かれるというワルシャワ花市場です。設立は1991年。現在、およそ550のお店が軒を連ねています。その名の通り、お花専門の市場。生産者直売のため、ワルシャワ中のプロの花屋さんが買い付けに来るほか、一般のお客さんにも大人気だそうです。ポーランドでは、誰かに会うとき、迎えるとき、かならずお花を用意するとか。それほど、花が身近だなんて、すてきな習慣です。まずは、市場内を散策してみることにしました。 ![]() ■カラフルな菊。白と黄色以外は着色したもの 色とりどりの花が咲き誇っていますが、やっぱり一番目を引くのはバラ。「バラは伝統的な花だよ。花の女王と呼ばれているよ。この国で一番愛されているのもバラだよ」と店のおじさん。バラはどこの国でも、やっぱり女王の花なんですね。バラ1本は1ズウォティ(約39円)。夏を代表する花、ヒマワリが並んでいます。なんだか、ヒマワリって、見ている人を元気にしてくれる気がします。お客さんにも大人気のようです。自分の部屋やお店、そして教会を飾るために皆買っていくそうで、飾る場所にあわせて大きさを選べるようになっていました。ヒマワリは1本2ズウォティ(約79円)から。 こちらには、とってもカラフルな菊が並んでいます。しかし、自然のものは白と黄色だけで、その他は着色したものだそうです。これは「名前の日」にプレゼントしたりする菊です。ポーランドでは、昔からその人の名前にまつわる記念日があります。菊といえばお墓参りの花ってイメージですが、ポーランドでも菊は墓地に供えます。でも墓地用はこれとは違う、もっと花が大きい種類だそうです。こう説明してくれたのは、30年間この仕事をしているというご主人。 ![]() ■葬儀用の花輪 午前7時。ようやく市場が本格的に活気づいてきました。こちらのお店に並んでいるのは…?あっ、よく見ると、見慣れた花、カーネーションです。ほんと迷ってしまうほど華やかです。カーネーションは1束15ズウォティ(約597円)。色の種類が多くてとてもきれいです。切花ばかりではなく、花篭も売られていました。葬式用の花輪です。花の種類に関係なく、白など薄い色は若くして亡くなったひとに供え、年配のひとや両親などのためには赤いものを供えるんだそうです。値段は40ズウォティ(約1,592円)から。 店主たちは、午前2時から作業をしているため、お疲れの様子です。もう少しですよ、頑張って! こちらは日本でも人気、優しくて可愛いかすみ草です。でも、やっぱりカラフル。「かすみ草は他の花の飾りよ。バラに合わせればバラが一段とキレイになるわ。最高の花よ。この仕事は好きでなければできないわ。私はこの花を栽培するために田舎に引っ越したのよ…」。こう話してる途中、大量に買っていくお客さんが来店。なんだか嬉しいですね。かすみ草1束が5ズウォティ(約199円)。どの店主も、本当に「花が好き」だという気持ちがストレートに伝わってきます。 ハンギングタイプの鉢植えも売られていました。今年はバルコニーなどに置く鉢植えが人気で、とりわけゼラニウムが人気だそうです。ゼラニウムは、香りが強くアロマなどにも使われている花。きれいな花が見たいなら、コズヴォフスキさんのところを紹介するよ!ということで、明日、一番人気という「ゼラニウム」の栽培を見学することにしました。午前9時。会社員なら、ようやく出勤の時間です。でも、夜中から働いている市場の人にとっては、店じまいの時間。あっという間に市場は終了。なんだか淋しげな路地に取り残された感じです。 ![]() ■師夫婦が網にかかった人魚を助けた 午前10時。ランチにはさすがにまだ早いし…。ワルシャワの人気観光ツアーのひとつだという、ヴィスワ川を下る遊覧船「水のトラム号」。に乗ってみることにしました。ポーランドを南北に縦断する大河ヴィスワ川は、ワルシャワ市民の憩いの場所になっています。その昔、ヴィスワ川沿いに貧しい漁師夫婦が住んでいました。網にかかった人魚を助けた老夫婦の名前が、ヴァルス(WARS)とサヴァ(SAWA)。その名前からワルシャワ(WARSZAWA)となったという説があります。この遊覧でワルシャワのあらたな表情にも触れることができました。約1時間半の遊覧で14ズウォティ(約557円)。 ![]() ■ジュレクのランチセット 遊覧船で町の名所に触れて気分は最高なんですが、お腹はペコペコになってしまいました。こちらは、ポーランドの伝統料理をいただけるというレストラン「クォプスキェ・ヤドゥオ」。田舎の民家を再現したという店内は、素朴で、寛げる温もりがあって、かなり料理にも期待できそうな雰囲気です。おすすめはジュレクとのこと。でもいったいどんなお料理でしょうか? 材料を見せていただきました。豚足、ソーセージ、ジャガイモ、ゆで卵、醤油、スパイス、ハーブ。へぇー…豚足を使うんですね。それに、絶対なくてはならない料理の要は、「ライ麦を発酵させたスープ」だそうです。楽しみ! 豚足でコラーゲンたっぷりのダシをとります。そこに材料を全部入れて、煮込みはじめました。煮込みながらパンの中身をくり抜いています。これがスープの器になるんです。待つこと30分ほどで、どうやら完成。爽やかなハーブの香りが漂ってきます。ランチセットは、パンにラードとチーズがセットされます。ポーランドの家庭料理の代表メニュー。ジュレクは、日本でいえばお味噌汁のような存在だそうです。口当たりのよい酸味があり、あっさりとして、まろやか。とっても美味しくいただきました。ご馳走さまです。18.5ズウォティ(約736円)。 ![]() ■約2千平方mの敷地に6つのビニールハウスが 翌朝、ワルシャワ花市場で今一番人気だという花、ゼラニウムの栽培を見学しに向かいました。ワルシャワの中心地から車で30分ほど。のどかな田園風景が広がる、ウルシノフ地区に到着しました。こちらが、市場のひとが紹介してくれた生産者のお宅です。広大な敷地に6棟ものビニールハウスが並んでいるので、間違いなさそうです。どうやら作業中のようです。黙々と作業をしているのが、人気のゼラニウムを生産しているというヴァルデマル・コズウォフスキさん(55歳)。 約2,000平方メートルの敷地に6つのビニールハウス。ビニールハウスのなかは、まるでお花畑のよう。ゼラニウムを中心に15種類の花が栽培されています。ヴァルデマルさんは、ゼラニウムの苗床を作っている最中。一番気をつけていることは、ゼラニウムは日中と夜の温度差。日中は温かくして、夜は涼しくしてあげるないとダメなんそうです。そうすることで花が長持ちして病気にならず元気に花を咲かせるんだそうです。ここで生産された花はとても評価が高く、今ではヨーロッパ各地へ出荷されているとか。あと1ヶ月程で花が咲くそうです。 ![]() ■花の手入れをするヴァルデマル・コズウォフスキさん 「花は目にも心にも欠かせないものだよ。ポーランド人は皆植物が好きで、常に接しているよ。だからリラックスできるんだよ」とヴァルデマルさん。15歳の頃からの草花好きが高じて、農業大学で専門知識を習得。1973年結婚した後も、花に対する熱意は変わらず、周りからはいい意味で “花馬鹿”と呼ばれるほど。奥さんのエルジビエタさんも、今や立派な専門家として本などを出版し、子供たちも作業に参加。家族全員で花作りに励んでいます。 「植物と接しているとリラックスできるよ。子供たちがこの仕事を継がなくても常に花と接してくれればそれでいいよ」とヴァルデマルさん。「花は気持ちがよいものよ。花のなかにいれば体も心もリラックスできるわ。もちろん花の栽培は難しいことが多いけど私は好きよ」と長女カタジナさん(33歳)。さらに、ヴァルデマルさんは続けます。「私は自分のすべての感情を仕事に込めているのよ。中途半端な古都は嫌いだよ。やりはじめたら最後までやるよ。そうすれば花もきれいに咲いてくれるよ」と。 ヴァルデマルさんは、朝の4時から、片時も手を休めることなく、働いています。最近は、ゼラニウムのほかに、ニューギニア原産のバルサミナという花の生産にも力を注いでいるとか。ヴァルデマルさんが注目しているとあって、バルサミナは徐々に人気が出てきたそうです。「ゼラニウムは太陽が大事だけど、このバルサミナは日陰でも育つんだ。こういった花の仕事もそうだけど、大事なのは質のよいものを生産する。そして、それをお客に提供することだよ」とヴァルデマルさん。 ![]() ■義母イレナ、次男スタニスワフ、長女カタジナ、ヴァルデマル、妻エルジビエタ お昼になり、やっと一息つくことになりました。同じ敷地内にあるご自宅で、義母イレナさん(81歳)、次男スタニスワフさん(14歳)、長女カタジナさん、妻エルジビエタさんと揃ってランチタイムです。とてもすてきな、そして立派なご自宅です。これぞ、まさに花御殿。この日のメインメニューは、ポーランドの母の味といえばこれ! ずばり“ロールキャベツ”。各家庭で、味付けや具材は違えども、おコメが必ず入っているんだそうです。家族で一緒に汗を流し、そして、同じ食卓を囲む。心安らぐ、団欒のひと時です。「家族がいるからがんばれるし、生産した花を売ることができるんだ」とヴァルデマルさんは言います。 食後、ほどなく、また作業を再開します。嬉しいことは同じお客が何回も来てくれて「買った花がきれいに咲いているよ」といってくれることだよ。健康が続く限りこの仕事を続けるよ。きれいな花の生産をしたいからね…。そう語るヴァルデマルさんの目は、静かで、けれども深い信念と愛情に満ちていました。ゼラニウムの花言葉は、決心・真実の愛…。激動の歴史を経て、再生した街・ワルシャワ。この町を彩る美しい花々が一堂に会す、ワルシャワ花市場には、花以上に、優しくてキラキラと輝く人々の姿があります。 |