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チリ サンティアゴ「7月10日青空市場」
![]() ■サンティアゴの新名所、プロビデンシア地 南アメリカのチリ共和国は、南北に細長い国土のなかで、独特の民族文化と治安を守ってきました。銅の埋蔵量、生産量ともに世界一であり、さらに金、銀、リチウムなどの鉱物資源が豊富。チリの農産物は既にトレーサビリティー(追跡可能性)のある商品だけではなく、口蹄疫ワクチン不接種清浄国、BSEが発生していない国として認定されています。日本からチリへの直行便はなく、北米のロスアンゼルス、ダラス、ニューヨークなどを経由して行くことになります。所要時間は経由地での乗り継ぎ時間を含めて30時間前後。通貨はチリ・ペソで、100ペソ=約23円(2006.4現在)。 首都はサンティアゴ。人口約600万人以上を擁する南米でも屈指の大都市。政治、経済、商業などすべてにおいてチリを支えている都市です。アンデスの山々に囲まれた盆地のため、1年のうち300日は晴天に恵まれます。気候は地中海性気候、アンデスの雪解け水が地下を伝わり、たっぷりとミネラルを含んだ水となって作物を実らせます。有名なチリワインもアンデスの恵みなのです。サンティアゴの新名所となりつつあるプロビデンシア地区。東京でいえばお台場でしょうか。16世紀にその基礎ができたというサンチャゴの街にも、都市開発の波は押し寄せています。 ![]() ■7月10日青空市場 サンティアゴの新市街にも市場が立ちます。平日は交通量が多いこの7月10日通りは、毎週日曜になると青空市場に変身します。それが「7月10日青空市場」。週末に開かれる青空市場の数は市内で約400。そのなかでも最も大きく、一番の賑わいをみせるのがこの市場です。1950年に開催され、現在約350の店舗が出店。この市場の売りのひとつが新鮮で安い農作物を提供することで、すべての農作物が24時間以内に収穫されたものといいます。およそ400mの歩道を埋め尽くす売り場の大半は生産者自身が販売、自慢の品が並びます。午前9時から午後3時までの営業時間中は、人の波が途切れることなく地元客で賑わいます。 ![]() ■伝統の飲み物、モテ・コン・ウェシージョ この日は、夏も終わり、本格的な秋も近いというのに気温は30℃。少し歩いただけで喉が渇いてしまいました。ジュース・スタンドのようですが、みんな何を飲んでいるんんでしょうか。ジョッキの中には粒々が…。ケ・エス・エスト?(これは何ですか)。ジョッキのなかの粒々はモテという大麦の一種。モテと乾燥桃(ウェシージョ)とをシロップで戻した飲み物「モテ・コン・ウェシージョ」です。昔からチリで親しまれている夏の飲み物です(200ペソ=約46円)。もちろん桃の果肉も味わいます。 ![]() ■賑わいをみせる野菜売場 この市場で最も賑わいをみせているのは、野菜売場です。トマトもソフトボールのように大きく、ずっしり。重さは800gもありますが、これで普通の大きさとのこと。果肉の厚さを見て納得しました。大きいだけではなく、味も世界で一番美味しいとのこと(400ペソ=約92円)。トマトの脇にあったのが、どのお店でも最もいい場所に置いているアボカド。日本のもの以上にねっとりとした食感を持っています(1kg900ペソ=約203円から)。コレステロールを下げてくれるのだそうです。 トウモロコシも、日本のものに比べはるかに大きい(1本100ペソ=約23円から)。茹でてもよいし、白インゲンとスープにしても、ケーキに入れても何にでも使ってるよとのこと。トウモロコシはどれも皮を剥いて、端を切ってあります。長持ちしなくなるのに何故でしょう? 理由は、「先の方は汚れてるだろ、だから切るんだ。粒が揃って、そうすればキレイにみえるだろ」とのことでした。確かに店先では、お客さんが自分でみて納得したものを選んで買っています。カボチャも実に大きいんです(一切200ペソ=約46円)。 大きいだけならまだ見てわかりますが、何なのか見当もつかないものもあります。ケ・エス・エスト?(これは何ですか)。トゥナというノパルサボテンの実だそうです。サボテンって実がなるんですね。ひとつ皮をむいてもらったら、なかはキウイのように小さな種がいっぱい。このまま食べるそうです。味もキウイに似ています(1kg500ペソ=約115円から)。チリやペルーの特産物として有名な果物。サボテンといわれてもちょっと想像がつきませんよね。ブドウ、リンゴ、ブドウ、これは? フルーツキュウリ!? キュウリだけど果物…それはキュウリじゃありませんよね? でも切り口から漂うのは、濃厚なキュウリの匂い。見た目はあくまでも果物。そして味はキュウリ、不思議です…(1kg500ペソ=115円)。 ![]() ■白インゲン 野菜売場のはずれに来ると、威勢のいい声とともに魚介類の売場が目に飛び込んできました。南北に長い海岸線を持つチリでは、さまざまな種類の魚が捕れます。ホヤを発見! このままレモンを搾ってもよいし、オーブンで焼いてもマリネにしても、美味しいのだそうです。ホヤのような珍味を愛するチリでは、日本と同じように魚を生で食べる文化があります。そして、またもやケ・エス・エスト? この言葉は完璧にマスターしたかもしれません。海草です。人間に必要な成分のヨードが入っていて頭の働きをよくしてくれるよとのことです(一束790ペソ=約181円)。この乾燥した海草は、油で揚げたようにパリッとしているんです。 市場を歩くと目立つのが赤い山。一見、唐辛子のようですがよくよく見ると形が違います。またまたしつこく…ケ・エス・エスト? 白インゲンだそうです。赤い衣を纏ってはいますが、なかは色白、確かに白インゲンです。赤いほど質がよいのだそうです。この豆を料理に使うのはチリの昔からの伝統とのこと。収穫の様子を見たければ、プエンテ・アルトに行くといいわよ!とのことで、見学することにしました。畑は赤く染まっているのでしょうか。明日が楽しみです。 ![]() ■貧者のステーキ 午後2時、少し昼食時間をずらしたのは、行ってみたかった人気のレストランがあるからです。それがレストラン「ロス・ブエノス・ムチャチョス」です。1,500人を収容できるのですが、時間をずらしても満席。人気の秘密はこのショー、カウボーイの踊り「ワッソ」をみせるサービスがあるからなのです。お客さんも参加します。おすすめ料理は、貧者のステーキ(ロモ・アロ・ポブレ)。牛肉は小さいサイズを頼んでも350g。塩・コショウのシンプルな味付けで焼いたステーキに目玉焼きとポテト。脂分が少ないのに、柔らかくジューシー。純粋に牛肉を味わう料理です。5,880ペソ=約1,352円。 ![]() ■自宅でくつろぐ黒田順子さんと、次女の純さん(23歳) 午後3時。この街に住んでもう30年という日本人女性に会いに行きます。この街には、チリでも有数のエリート校、国立サンティアゴ大学があります。この大学で日本語学科で教鞭を執るのが黒田順子さん(58歳)。日本語教務主任の傍ら茶道や華道など日本文化の普及にも努めています。学生はチリの将来を担うエリートたちで、日本の文化・考え方を知りたいと熱心に勉強をしています。とても躍動的な授業なので勉強が楽しいわ!と学生たちに好評です。 高級住宅地ラス・コンデス地区に住む黒田順子さん。ポーランド留学時にチリ人男性と知り合って1976年に結婚、チリに移住しました。1989年、事故によりご主人が他界、2人のお子さんがいらっしゃいます。「サンティアゴは南米の中でも治安がよく、住みやすいわ。30年暮らしていても気持ちは日本人のまま。チリと日本、両国とも好きだし、定年になったら1年のうち半分ずつ住みたいわ」と笑顔で語ってくれました。 ![]() ■トウモロコシ入りのカボチャベースのスープ 市場を訪ねた翌日の正午。真っ赤なさやの、白インゲンの収穫を見せてもらうために街を出ました。街の風景を眺めているだけで、治安のよさが感じられます。そして、徐々に牧歌的な風景に変わっていきます。郊外のプエンテ・アルト地区にルイス・ロメロさん(60歳)のお宅はありました。お子さんは既に独立して家を出ていて、ご夫婦二人で暮らされているそうです。 さっそく白インゲンを使った料理をご馳走していただくことになりました。カボチャのスープで、トウモロコシと白インゲンを茹でたもの。チリのポピュラーな食材ばかりです。カボチャのほんのりとした甘さが、白インゲンのあっさりとした味を引き立てます。家族は常に私を助けてくれるよ。だから私はこの年齢になってもがんばれるんだ、とロメロさん。 ![]() ■一日腰を折って働きます ロメロさんの畑は、自宅から車で15分ほどのところにあります。ロメロさんは、5ヘクタールの畑で白インゲン(ココロンケという種類)、トウモロコシ、アルファルファ、ズッキーニの作物を栽培しています。白インゲンを栽培するスペースは全体の1/5、1ヘクタールほど。最盛期をむかえ、膨らんだ赤いさやが、そちこちで風に揺られています。収穫は一本一本手詰みで行います。この辺の土地はとてもよいよ。あとはよい仕事をすればいいものを出荷できるよ、とロメロさん。 ロメロさんは親子三代に渡る農家です。71年に結婚し、4人の子供に恵まれました。子育て中は、仕入れ販売が仕事でしたが、2004年から土地を借り、こうして自分で作物を作りはじめたのです。「ようやく私は作物を自分で作れるようになった。それはとっても嬉しいことだよ。ひとから借りている土地だけでど、将来的には自分の土地を持ちたいよ」と抱負を語ってくれました。 ![]() ■ロメロさんと、奥さんのレヒーナさん(47歳) 一日腰を折って働き、収穫量は25キロ。そのあとには力仕事もあります。川の水を畑まで引き入れる作業です。アンデス山脈から流れ出る水はたっぷりとミネラルを含み、作物にとてもよいのです。山の雪解け水が近くのマイポ川まで流れていて、夏は雨が少ないけれど常に汚染されていない水を運んでくれます。だからこそよい野菜が作れるのです。よい水を得られるよい土地、これがチリの農業で成功するための、欠かせない条件です。 ロメロさんの祖父と父親は他の人の農場で使われていました。ロメロさんは、借りものではない自分の土地で作物を育てたいという夢を今も追っています。「街に行くと息が詰まる。このような自然な空気が好きだし、私にはこういう場所が合っているよ。いろいろな世界の人たちに私たちが作った野菜を食べてもらいたいよ。そして、私が最高によい野菜を作っていることを知ってもらいたいね」と野菜作りに誇りを持って語るロメロさん。白インゲンをコツコツと手で摘みながら、一歩一歩夢に近づいていく。年をとっても変わらない思い。自然の中で育まれた信念がさやの中にたっぷり詰まった白インゲンが、今日も市場で売られます。 |