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フィジー スバ「スバ市場」
![]() ■フィジー諸島共和国の首都スバ 常夏の楽園、フィジー。南西太平洋、ニュージーランド北方に分布する島郡からなる共和国。330以上もの島々からなり、合わせれば四国とほぼ同じ大きさになります。島々の大部分が火山島で平野が少ないが、熱帯の花々が咲き乱れる豊かな自然にあふれています。1643年にオランダ人探検家タスマン に発見され、ヨーロッパに知られるようになりました。 1874年イギリスの植民地となり、1970年イギリス連邦内で独立、1998年に国名を現在の国名(フィジー諸島共和国)に変更しました。 言語は、フィジー系はフィジー語、インド系はヒンディー語を使用。公用語、共通語としては英語が使用されています。フィジー系はほぼ100%キリスト教、インド系はヒンズー教、回教。観光、砂糖、衣料が三大産業です。フィジーは、ラグビーが主要スポーツである、世界でも数少ない国のひとつです。時差はプラス3時間(日本が正午の時、午後3時)。 成田〜ナンディ間の直行便があり、所要時間は約8時間30分。通貨はフィジードルで、1F$=約75.2円(2006.3現在)。 ![]() ■フィジー最大の規模を誇る総合市場「スバ市場」 数ある島のなかでも最も大きなのがビチレブ島、その島に首都スバがあります。南太平洋随一の港町でもあり、世界中からやってきた客船や漁船がいつも停泊しています。島々を束ねる政治経済の中心ながら、大都市の慌ただしさとは無縁で、おっとりとしたムードが漂うスバ(人口は約14万人)。人々で賑わい、活気があるのはロッドウェル・ロード。カフェやスーパーマーケットが軒を連ねるメインストリートですが、高い建物の圧迫感がないせいか、どこか開放的です。庶民の足はバス、バスターミナルはいつも人で溢れています。そのバスですが、なんと窓ガラスがないのです。晴れた日は気持ちいいだろうけれど、雨の日はどうするんだろうと思いましたが、どうやら窓枠に取り付けられた緑の幌を下げるだけらしいのです。 スバの中心地にあるのが、フィジー最大の規模を誇る総合市場「スバ市場」。1950年に創設され、店舗数は約1,200。植民地時代、同じインド領だった関係で多くのインド人が移住してきました。そのため人口の約半数がインド系住民、市場ではフィジー系住民とインド系住民の売り手が商いを行い、フィジー語とヒンディー語、そして公用語の英語が飛び交います。フィジ系の方とインド系の方との見分け方は髪の毛。フィジー系の髪の毛は硬くカールしていますが、インド系はストレートです。 ![]() ■これがタロ芋。フィジーではダロと呼ばれる。 市場は街の中心に面しており、しかも日曜日以外の毎日営業しているため、多くの人々で賑わいます。気候に恵まれているフィジーは作物栽培に適しており、野菜、果物が所狭しと並んでいます。とりあえず、この市場をぶらぶら巡ってみることにしましょう。いろいろな店で売られています。根っこのような…芋のようなもの。覚え立てのフィジー語でお店のおじさんに尋ねてみました。「ブラ!(こんにちは)ナザバ・オンゴ?(これはなんですか)」。答えはタロ芋。フィジーではダロと呼ばれています。主食として芋を食べるそうです。この国の中でもタロ芋はやや高級品、5F$(約376円)から。やわやわになるまでしっかり茹でて食べます。癖のない味なのでどんな料理にも合うそうです。また、タピオカは欠かせないよ!とのこと。おじさん!ビイナカ(ありがとう)。おじさんが言っていたタピオカがありました。こちらの方が安く、庶民的だそうです。2F$(約150円)から。 フルーツ王国フィジーのなかでも、世界に誇れる自慢のパパイヤ。切れば果肉から糖分をたっぷり含んだジュースが滲み出します。1kgで1F$(約75円)から。一級品のパパイヤが日常のおやつとして売られているとは、なんとも贅沢ですね。縞のないスイカ、これも人気のようです。大きくて安い。1kgで2.5F$(約188円)から。ナスは1kgが1F$(約75円)から、キュウリも1kgが1F$(約75円)から、カボチャは1kgが3F$(約225円)から。市場で売られているものは、すべて島で取れたもの。輸入品はありません。 日本でもお馴染みの野菜をみつけました。オクラです。オクラは世界中で「オクラ」と呼ばれています。タロ芋の葉も売られていました。葉も無駄にしない。魚と一緒に鍋に入れてココナッツミルクで煮るそうです。ひと束1F$(約75円)。生鮮食品が多い市場の中で目を引く、薄いオレンジ色のボトルがありました。ラベルも貼られてなく、飲み物にも見えない。よし、聞いてみよう! 「ナザバ・オンゴ?(これはなんですか)」。これはココナッツオイルで、肌に塗るとスベスベになるそうです。ココナッツオイルは1ビン5F$(約376円)。 ![]() ■骨付きラム肉のカレーとタピオカ芋。 二階はちょっと雰囲気が違います。どの棚を見ても、売られているものは同じ。根っこのようなものが並んでいます。またもや「ナザバ・オンゴ?(これはなんですか)」。「カバ」という名の木で、飲み物の元になるという。昔、それこそ太古からフィジーでは使われてきたものらしい。この木を乾かし、細かくくだいて粉末にする。ただ、水に溶くのではなく、布の袋に入れて、水の中で濾し、そのエキスを飲みます。この色からは、泥臭いようにしか思えないのだがと思っていたら、さっそく一杯すすめられました。飲んだら舌が痺れました。軽い覚醒効果があり、身体によいとされる「カバ」は特別なものとされてきました。田舎の村に行く時には土産として持参、そこでカバの儀式をしないと村には入ることはできないそうです。正式な技師から仕事の合間まで、広くカバは飲まれています。ナブアというところにカバの畑がたくさんあるということなので、翌日、見に行くことにしました。 市場を一通り巡ると午後2時になりました。そろそろお昼にしよう! ちょうど市場の脇に食堂がありました。スタンド式の店が多い。みんなの食べている物をのぞくと、カレーのようです。観光用のフィジー料理と違い、普段、人々が食べているのはフィジー風インド料理。本日のオススメはラムカレーとタピオカ。柔らかく煮込んだ骨付きラム肉が、辛味を押さえたカレースープに浮かんでいます。うーん、実にタピオカ芋とよく合う。3.5F$(約263円)。 ![]() ■ベンガ島サワウ族に伝わる火渡りの儀(アーツビレッジ) 市場を出てちょっと足を伸ばせば、伝統文化のテーマパーク「アーツビレッジ」があります。フィジーの文化・伝統・芸能が楽しめる文化施設です。8ヘクタールの園内をボートで巡れば、集落を再現した小島内で布を織る様子や火をおこしている姿などの生活風景を見学できます。また、フレ(伝統的な家屋)の教会や、ベンガ島サワウ族に伝わる火渡りの儀式もみることができます。禁欲、断食など厳しい修行をした者だけが火を渡ることができます。入園料は45F$(約3,384円)。 ![]() ■マタイカダ村での「カバ」の儀式 朝9時。フィジーに伝わる不思議な飲み物「カバ」の正体を突き止めるため、ナブア地区マタイカウダワ村という場所に向いました。視界から海が消え、空と木々、青と濃い緑の世界を走る。小さな小さな村、マタイカダワ。わずかな家が肩を寄せあうように並んで建っています。人口は28人。ナセプロニ・ナギアさん(75歳)、妻ジョシビニさん(66歳)、五男ワイセア(38歳)が出迎えてくれました。案内されたナギアさんの自宅は、風が通り抜ける高床式の素朴な建物でした。 ここから畑へ行く前に、集会所へと連れて行かれました。村に人が来たら、何はともあれ「カバ」の儀式。村人全員を集め、カバが用意されます。訪問者、そして地位の高い者からカバを飲む。典型的な男性社会です。飲む前に手を一度たたき、「ブラ」というのが作法。清め、健康を願う。一族の平和。さまざまなものが、この儀式に込められています。 ![]() ■ナギアさん(左)とカバの根を手にする五男ワイセアさん いよいよナギアさんのカバの畑へ。山道を踏み入り、奥へと向かうこと10分、畑では約2,000本のカバの木が栽培されています。ナギアさんは先祖代々カバを栽培してきました。カバは常に需要の絶えない優秀な農作物だとのこと。50年前に結婚し、生まれた子供も独立してカバを栽培しています。目下の悩みは、山の中腹にある自分の畑を誰が継いでくれるのか。「カバの栽培は場所が命、ここは比較的涼しいからいいよ。暑いところではカバは育たないからね」とナギアさん。 カバは収穫までに3年から5年と時間はかかるが、栽培の手間が多い作物ではないそうです。きょうは3年物の収穫を見せてくれました。根が広がっているから傷つけないよう気をつけて掘っていきます。切り落とした枝はまたあとで使います。こうして掘り起こした部分が商品となるわけです。3年物はやや小さい。今度は先程切り落とした枝を植えていきます。この枝が次に根を張り、また商品となります。しかし、どうして寝かせて植えるのでしょうか? 挿すのが普通なの…こうした方が根の伸びがいいとのことでした。最後に、どこに植えたかわかるように目印を置きます。これが掘り起こされるのは3年後か、5年後か。ナギアさんの畑ではタロ芋やタピオカも栽培しています。 収穫し持ち帰ったカバの泥を丁寧に落とし、天日干しします。フィジーの焼けるような日差しの下で3日間、カラカラに乾燥させます。それをタンビリと呼ばれる鉄の器に入れ、鉄棒で粉々に砕きます。鉄棒はトゥキと呼ばれ、かなりの重量があるため、交代しながら作業をすすめます。砕くこと20分、カバは粉末状になりました。 ![]() ■息子たちの家族と食事中のナギアさん(中央) 仕事が一段落したのが午後2時。手伝ってくれた息子たちの家族と一緒に昼食をとります。献立はウナギのスープ、魚料理、タピオカ、パンの実。いずれの食材もここで取れたものばかりです。フィジー系の人のほぼ100%がキリスト教徒であり、食事前のお祈りは欠かしません。大家族での食事がはじまりました。これだけの家族の生計が、カバの栽培によって成り立っているのです。 「カバは体にいいよ。畑仕事のあとに1、2杯飲めば疲れが取れるし、その他、どんな時に飲んでもリラックスできるすばらしいものだよ」。さらにナギアさんは続けます。「毎日、家族と一緒に過ごすことは楽しいことだ。家族の元気な姿を見れば仕事もがんばれるよ」と。誰もがリゾートを思い浮かべる南太平洋の楽園で、ビーチチェアからは見えない、そこに生きる人々の暮らしに出会いました。何気なく通り過ぎてしまいがちなものに足を止める。ガイドブックには記されない魅力を知る旅が、そのとき生まれます。その旅はいつも市場からはじまります。 |