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世界の市場紀行 ワールドバザール21 〜国境を越えて〜
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■毛沢東像
■自転車の国
■ビルが立ち並ぶ
■成都に到着
13億人という世界一の人口と、ユーラシア大陸の東から中央にかけて960万平方キロメートルという広大な国土を誇る中華人民共和国。偉大なる歴史的文化遺産が各所に点在し、風光明媚な自然にも恵まれいる一方で、都市部では近代的な高層ビルが立ち並びます。日本がもっとも古くから関係を持つ国で、言葉や生活文化などにおいて、互いに大きな影響を与えてきたことは言うまでもありません。
その昔、人々は命を賭けて海を渡っていましたが、今では中国の各都市と日本の各都市を結ぶ飛行機の路線、本数とも年々増加しています。このことは、両国の民間レベルでの活発な交流を物語ります。ビジネスに、観光に、留学に、今中国を訪れる日本人は飛躍的に増加しています。
国民の約90%が漢民族で、彼らの言葉である漢語(中国語)が公用語です。日本との時差は、マイナス1時間。日本が正午の時、中国は午前11時です。東西に広大な国土を持つ中国ですが、時間は統一されています。通貨は人民元で、1元=約12.9円です(2005年3月現在)。
数ある中国の都市のうち、今回私たちが訪れたのは中国西南部の中心地、成都です。成都へは、日本から北京や上海を乗り継いで行くことができます。成田からは毎日、福岡からは週に4日と便利です。乗り換え時間を入れて、7時間半ほどで成都に到着します。
■高層ビル群
■都江堰の雄大な景色
■ロウソクに火が燈る
■二王廟
■つり橋で川を渡る
■観光地らしく賑わう
成都市内には、国際サッカースタジアムや高層ビルが立ち並び、今なお高層ビルの建設ラッシュが続いています。通勤時間になると、車とバス、バイクと自転車が大渋滞。市内には南河と府河が流れ、川沿いでは散歩する人も多く、のんびり時間が過ぎていきます。都会的な側面と、中国内陸の素朴な面も持ち合わせた魅力溢れる街です。
成都市内にも観光スポットはいくつかありますが、成都の北西約58kmに世界遺産にも指定されている、古代水利施設「都江堰(トコウエン)」があります。成都市内から高速道路を利用して1時間ほどで着きます。
都江堰は、紀元前3世紀の戦国時代、山から流れる岷江の氾濫を防ぐために秦の照王の時代に李氷、李二郎父子によって作られたという水利施設です。この施設、2000年あまり経った今でも充分に機能しているというから驚きです。実際利用されてる施設が世界遺産に登録されること自体、珍しいことなのだとか。
岷江の流れを、人口の中州によって分流し、それをさらにいくつかの灌漑用水路に振り分け、成都平原に流れていくように作られています。現代のような重機もない時代に、この山奥でどうやって岩山を切り崩して行ったのでしょうか? なんと、岩山の表面に火を放ち、充分に熱したところに水をかけ急激に冷やし、その結果ひび割れたところを手で崩していくという、気の遠くなるような作業を二代に渡って続け、切り拓いていったのです。
また、分流するための中洲は、竹で編んだ籠に石を詰めたのもを舟で運んで沈めていく、というこちらも気の遠くなるような作業。この都江堰よって、成都平原は潤い、成都を「天府の国」と呼ばれる豊かな大地に変えたのです。都江堰の東岸に、李親子の業績を称えるために二王廟があります。都江堰は緑豊かで空気も澄み、成都の都会の喧騒を離れ、気分転換に最適でした。
■五塊石市場
■1860もの店舗が
■くしゃみが出そう
■ピータンいろいろ
■ピータンの中身
■ワイルドな昆布
成都市の四川省の特産物などを、乾物を中心に扱う「五塊石市場」が今回の舞台です。成都の下町、五塊石地区にあり、中国全土20都市から品々が集まります。卸売りの市場ですが、近所の住民のために小売もしています。1860もの店舗がひしめき合い、香辛料や米、麺や乾物が所狭しと並んでいます。
市場内の一角に、四川料理にはなくてはならない香辛料、唐辛子を集めたエリアがありました。見渡す限り、真っ赤っ赤。気のせいか咳込んでしまいます。どれも同じに見える唐辛子ですが、よく見ると細長いもの、丸っこいもの、いろんな種類があることがわかります。種類が違うと、香りや辛さが違うそうです。500g4元(約52円)ほどですが、500gもの唐辛子を消費するのは、日本人としては容易なことではありません。四川の人は年間どのくらい消費するんでしょうか?
その奥には、木箱に入ったピータンが山積みになっています。泥で包んでピータンを作るんですね。知りませんでした。そのことで、味も美味しくなり、日持ちもするようになるそうです。6〜8ヶ月、日持ちするというから驚きです。茶色の泥で包まれたピータン、白い塗布用土、黒い塗布用土、いろんな種類があります。
ピータンはひとつ2元(約25円)。日本では高級食材のイメージが強いですが、本場では安いんですね。中を割って見せてもらいました。黄色い透き通った白身が不思議な感じ。表面に雪の結晶のようなものがあるのが美味しい印だとか。
日本のものに比べると、かなりワイルドな昆布を見つけました。中国でも昆布を食べるんですね。煮物にしたり、冷菜にして食べるそうです。「昆布はヨードがあるから、体にいいんだよ!」と店の人。健康を気遣う四川人には人気だそうです。昆布は500g2元(約25円)と驚きの値段です。
■食べる竹でダイエット!
■いい味出してるタバコ屋さん
■美味しく出来た様子
■様々な香辛料が並ぶ
巨大なツクシのようなものがあります。これは?正解は竹。燻製風に焼いて乾燥させたものだそうです。スープや、和え物に使うそうです。四川産の竹のいいところは、やわらかくて美味しいところ。なんと竹はダイエットに効く!ということです。これは嬉しいですね。四川産の竹は500g22元(約284円)で、安いものは500g3元(約39円)から。産地によって値段に開きがあるんですね。
屋根のある一角に、乾いた葉を売るおじいさんがいます。何に使うのでしょうか? 「これはタバコだよ」と言って、店頭の葉っぱを適当な大きさにカットして、クルクルっと丸めて、あっという間にタバコが出来上がりました。それを煙管(キセル)に取り付け、おじいさんは美味しそうに吸って見せてくれました。
このタバコは四川省産で、普通のタバコに比べると大分きついそうです。タバコ農家の農民が、タバコを栽培し、それを茹でて乾かしたものだそうです。お値段は500g7元(約90円)。タバコもおじいさんもいい味出してます。
■今年の新茶
■試飲も可能
■八角は八つの花びらの様
■いろんな砂糖
■自転車の上で一休み
入り口近くにお茶を売るお店を見つけました。たくさんの茶葉が並び、透明なコップで実際にお茶を入れ、その色や味を確かめながら買うことができます。店頭には今年の新茶も並んでいます。「お茶は中国何千年の歴史の中でも重要な飲み物なんだよ」とお店の人。
オススメは?と聞くと、「この新茶の龍芽(リュウガ)だよ!」と言って、お茶を入れてくれました。黄緑色がきれいです。500g170元(約2193円)。茶葉が開いて沈みかけた時が飲み頃だそうです。
めずらしい香辛料も並びます(四川省の人は、本当に香辛料が好きですね)。よく聞く「八角」、中国南部原産のモクレン科の実を乾燥させたものだそうですが、本当に8つの花びらのようです。八角は500g5元(約65円)。日本に比べたら、驚くほど安い値段で手に入ります。生姜のような根を乾かしたものは、三奈(サンナ)という香辛料、500g9.5元(約123円)です。
黄色いゴツゴツしたものや、茶色いレンガのようなものを積み上げたお店があります。看板の漢字を読み解くと…砂糖。それぞれ味が違うので、用途が違うそうです。黄色いものはお酒を造るのに使うそうで、500g2元(約26円)。茶色いのはサトウキビの砂糖で、500g2.5元(約32円)です。辛いもの好きの四川人ですが、飲み物は、甘いものが人気だそうです。
■空心麺の明禾春
■接客中の陳さん
■製品の数々
■刀削麺の店
■刀削麺を削り入れる
■お腹いっぱい、大満足!
市場の中で最も評判のお店「明禾春(ミンカシュン)」があると聞き、訪ねてみました。店先には「空心麺」と書いた箱がたくさん並んでいます。空心ってことは…考えていると、「麺の真ん中が空洞になってるんです。空心麺は四川省の伝統的な麺なんですよ!」とお店のオーナー、許(キョ)さんが得意げに教えてくれました。
ちょうど店先で許さんの奥さん、陳(チン)さんが接客をしています。お客さんいわく、「空心麺は、鶏のスープに入れると美味しいわ。よく買いに来るの」とのこと。
「空心麺に興味があるなら、明日私の工場に見に来ませんか?」と、許さんからお誘いをいただきました。四川名物である空心麺がどんな風に作られるのか、その作業を見せてくれるというのです。私たちは、是非にとお願いし、翌日お邪魔する約束をして、お店を後にしました。
お腹が空いてきたので、市場近くの食堂街へ。麺の話を聞いていたら、麺が食べたくなりました。日本ではまだ珍しい刀削麺を出すお店があったので、歩道にあるテーブルに腰を下ろしました。牛肉刀削麺と豚肉饅頭を注文しました。
待つこと数分。出来立てアツアツの料理を運んでくれます。ラー油と香草がたっぷり入った刀削麺は、辛いけど意外とあっさりとしています。豚肉饅頭もアツアツで美味しい。ボリューム満点ですが、ぺロッとたいらげてしまいます。それにしても驚くのはこの安さ。牛肉刀削麺1杯3元(約38円)、豚肉饅頭8個で2元(約25円)、大満足です。
■のどかな畑の中に工場
■明禾春公司
■臼で麦を挽く
■水加減が命
■はじめは太い
■段々細く
翌日、私たちは早起きして、成都市の東隣、徳陽市中江県の空心麺工場を訪ねました。街を抜け、山を越え、車で4時間位かかりました。成都とはうって変わって、本当にのどかないいところです。
そんなのどかな菜の花畑の中に、許さんの大きな工場兼自宅がありました。弁楼村で一番のお屋敷です。社長である許 治明(キョ チミン)さん(38歳)と、奥さんの陳 春梅(チン シュンメイ)さん(36歳)が出迎えてくれました。
さっそく四川省の特産「空心麺」の作り方を見せていただきます。まず麺を作る粉を作ります。石臼で地元中江産の麦を挽きます。この時、水を混ぜてドロドロの状態にします。全部挽き終わったら、水を何度も切るそうです。約4時間ほど乾燥させると真っ白い粉になるそうです。
出来上がった粉に卵と水を加えて30分ほどこねていきます。その時、生地の手触りや感触で、水分量を加減するのがポイントだそうです。その日の気温などによっても違うので、長年の勘だけが頼りです。
こねあがった生地を3回に分けて、ひも状に伸ばして樽の底に渦状に巻いていきます。この時に中が空心になる技術を施すそうなんですが…これは代々引き継がれる秘技ということで、「申し訳ないけど…」とシャットアウト。見せていただけませんでした。一体どうやって空心にするんでしょうか。私たちの疑問は膨らみます。
■重量で麺を伸ばす
■麺が伸びてきました
■天日干しで、さらに伸ばす
■空心麺カーテン
■取り込むのも大変
■ザクザクと麺を切る
樽に二本の細い竹の棒をセットしました。まだまだ太い麺を、この二本の細い竹の棒に絡めていきます。絡め終わったら、土で出来た囲いの中で、竹の棒の片方は引っ掛け、もう片方の竹の棒はぶら下げておきます。すると、竹の棒と麺自体の重みで徐々に下に下がり、麺が伸びていくという仕組みなんです。お分かりいただけますか?
そのまま待つこと数十分。麺が伸びて、床に付く位の長さになったら、外の麺干し台に掛けて、天日干ししながら、さらに麺を伸ばしていきます。それにしても高い。麺同士がくっつかないように注意が必要です。干すのも一苦労ですね。
天気がよければ30分ほどで、約3mの長さまで麺は伸びます。出来上がるころになると、麺は髪の毛のように細くなっています。これだけ長い麺のカーテンは圧巻です。
出来上がったら、麺を折らないように取り込みます。不思議と乾いているのに、弾力があるので、簡単には折れません。すべて手作業で行っています。重いものを運んだり、ハシゴを上り下りしたりと、かなりの重労働でもあります。
製品化するために切り揃えて、箱詰めにすれば完成です。これだけ手間がかかっていて、1箱12元(約155円)だそうです。
■箱詰めして完成!
■弾力がある空心麺
■茹で直してもコシは強い
■説明する許治明さん
■楽しいお昼ご飯
許さんに、空心麺について、お仕事についてお話を伺いました。「空心麺はコシが強い。中が空心だから、弾力性もあるんだ。」と言います。さらに空心麺はノビることがなく、茹で直してもコシは強いまま。美味しくいただけるそうです。
今では事業も拡大し、中国全土そしてシンガポールや香港などにも輸出し大成功を収めているように見える許さんですが、はじめからこうだった訳ではありません。17歳から師匠である叔父さんに弟子入りし、2年間みっちり修行したそうです。空心麺の技術は代々受け継がれる秘伝なんだそうです。
19歳で独立してからも、なかなか売れ行きが伸びなかったといいます。自分を信じ、質のいい空心麺を作り続けることで、いつしか口コミで評判がひろがり、売れ行きもよくなっていったといいます。
たった4人の従業員で、ここまで会社を大きくさせた許さんの夢はさらに広がります。「空心麺とこの中江の名が、世界中に広がっていくと嬉しい。これからも、空心麺は四川省のひとつの食文化として、誇りを持って作り続けて行きたい」と言います。日本でも許さんの空心麺がお目見えする日も、そう遠くはないはずです。